借金の整理を確かめる

行政書士に債務整理は頼めない理由

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2026/9/21公開

「弁護士や司法書士より、行政書士のほうが費用が安いのでは」と考えて調べる人がいます。結論から言うと、行政書士は債務整理の交渉も申立ても代理できません。金額の上限があってできないのではなく、そもそも入り口が別です。条文から確認します。

法律事務の代理は、原則すべて弁護士だけ

出発点は弁護士法72条です。

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

「その他一般の法律事件に関して……代理……若しくは和解」が任意整理にあたります。債権者に借金の減額を持ちかけ、合意して和解書を取り交わす。これは条文の言葉そのままの「代理」と「和解」です。原則、弁護士でない者はこれを仕事にできません。

条文には続きがあります。「この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない」。例外があるということです。

司法書士法にはその例外があるが、行政書士法には無い

その例外にあたるのが司法書士法3条1項7号です。

民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であつて紛争の目的の価額が裁判所法第三十三条第一項第一号に定める額を超えないものについて、相談に応じ、又は仲裁事件の手続若しくは裁判外の和解について代理すること。

法務大臣の認定を受けた司法書士に限り、1件140万円までの「裁判外の和解について代理する」ことが認められています。任意整理を代理できる根拠は、この条文一本です。司法書士が代理できる140万円の上限と認定の条件は司法書士と弁護士の違いは代理できる金額にまとめてあります。

行政書士法には、これにあたる条文がありません。弁護士法72条の「他の法律に別段の定めがある場合」に、行政書士法は入っていないということです。

行政書士の業務は、書類の作成に限られている

行政書士の業務を定めているのは行政書士法1条の3です。

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

挙げられているのは「作成すること」だけです。代理・交渉・和解という言葉は出てきません。官公署に提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類を作るところまでが業務で、その書類を持って相手方と交渉することは、この条文の外側にあります。

書類の作成でも、他の法律が制限しているものは扱えない

さらに同条2項が、その作成業務にも枠をはめています。

行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

債務整理に関わる書類のうち、作成そのものが弁護士法72条の「法律事務」にあたる(作成する行為が交渉や代理と一体になっている)ものは、この2項によって行政書士の業務から外れます。たとえば債権者への和解案の提示書面や、裁判所へ提出する自己破産・個人再生の申立書類がこれにあたります。申立書類の作成を代理できるのは、司法書士法3条1項4号によって司法書士に認められているからで、行政書士法には対応する条文がありません。

3者を並べる

法務大臣の認定を受けた司法書士(認定司法書士)と、弁護士と、行政書士を並べます。

弁護士

  • 交渉・代理に金額の上限なし
  • 自己破産・個人再生の申立ても代理できる

認定司法書士

  • 1社あたり140万円までの裁判外の和解を代理できる
  • 自己破産・個人再生は書類作成のみ(代理ではない)

行政書士

  • 交渉・代理を認める条文が無い
  • 官公署提出書類の作成のみ(代理にあたるものを除く)

債権者との交渉・裁判所への申立てを代理できるかどうか

債務整理で誰が何をできるか(弁護士法72条・司法書士法3条・行政書士法1条の3)

弁護士と認定司法書士の違いは金額の上限(140万円)でした。行政書士との違いはそこではありません。上限の話にすらならず、代理そのものを認める条文がないというのが行政書士の位置づけです。

行政書士に頼める書類もある

行政書士の業務が全面的に禁止されているわけではありません。1条の3が挙げているのは「官公署に提出する書類」と「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成です。債務整理と関わる場面でも、たとえば相続放棄の前提になる戸籍関係の書類集めや、遺産分割協議書のように当事者どうしがすでに合意した内容を書面にする作業は、交渉を伴わないので行政書士の業務にとどまります。

線引きは「交渉するかどうか」です。相手方と条件をやり取りして決めるのが代理・交渉、決まったことを書類にするのが作成。債務整理の中心は債権者との条件のやり取りなので、どうしても代理・交渉の側に入ります。

見かけたときに確かめること

行政書士事務所のサイトで「債務整理のご相談」「借金問題を解決します」といった案内を見かけることがあります。相談を受け付けること自体は、他士業への取次ぎや書類作成の相談であれば行政書士法の範囲内でも起こり得ます。ただし、

  • 債権者と直接交渉し、減額や分割の条件をまとめる
  • 裁判所に提出する自己破産・個人再生の申立書を作成する

このどちらかを行政書士自身が行うとうたっている場合は、根拠になる条文が見当たらないことになります。事務所の説明が「相談」までなのか「代理」まで踏み込んでいるのかを、文言で確かめてください。

資格者を名乗る事務所が実際に何を確認できるかは、債務整理のおすすめを名簿で確かめるに司法書士会・弁護士会の名簿検索の手順をまとめてあります。行政書士についても日本行政書士会連合会の登録者検索で、登録の有無自体は確かめられます。

まとめ

  • 債権者との交渉・和解の代理は、原則すべて弁護士法72条で弁護士に限られる
  • 司法書士法3条1項7号が例外を作り、認定司法書士は1社140万円まで代理できる
  • 行政書士法には、この例外にあたる条文が無い
  • 行政書士法1条の3が定める業務は書類の作成までで、代理・交渉は含まれない
  • 自己破産・個人再生の申立書類の作成も、行政書士法には根拠となる条文が無い

この記事で確かめたこと

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