個人再生の最低弁済額は条文に書いてある
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個人再生でいくら払うことになるかは、事務所ごとの見積もりで決まる話に見えます。実際には民事再生法が段階を決めていて、そこを下回る計画は認可されません。
不認可になる線として書かれている
条文の書き方が少し変わっています。「いくら払え」ではなく、その額を下回ると不認可にすると書かれています。
231条2項が小規模個人再生の不認可事由を並べていて、その3号と4号が金額の話です。
基準債権の総額3,000万円
3,000万円以下
5分の1か100万円の多いほう。ただし5分の1が300万円を超えるときは300万円
3,000万円超 5,000万円以下
10分の1
3号は「10分の1を下回っているとき」、4号は「5分の1または100万円のいずれか多い額を下回っているとき」と書かれています。
4号には括弧書きが2つ付いています。基準債権の総額が100万円を下回るときはその総額、5分の1が300万円を超えるときは300万円です。つまり上限は300万円で、借金が1,500万円を超えても弁済額は増えません。
5,000万円を超えると使えない
2号に、無異議債権と評価済債権の総額が5,000万円を超えているときは不認可にすると書かれています。住宅資金貸付債権などは除いて数えます。
個人再生に上限があるのはここです。超える場合は別の手続きになります。手続きの比べ方は債務整理の種類にまとめました。
収入の見込みも条件
同じ2項の1号が、将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがないときを不認可事由にしています。
金額の条件を満たしていても、収入の見込みが無ければ通りません。逆にいえば、収入があることが個人再生の前提です。
給与所得者等再生はもう1つ線が増える
その前に、そもそも選べるかどうかの条があります。239条1項です。
第二百二十一条第一項に規定する債務者のうち、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれるものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「給与所得者等再生」という。)を行うことを求めることができる。
読むところは2つです。221条1項の要件(収入の見込みと、再生債権の総額5,000万円以下)を満たしていること。そのうえで収入の「変動の幅が小さいと見込まれる」こと。
入口の条と、認可されるかどうかの条は別です。 239条が申立ての側、このあと読む241条2項が認可の側になります。
申し立てる時期も決まっています。同条2項は、給与所得者等再生を求める申述を「再生手続開始の申立ての際」にしなければならないとしています。あとから切り替える形ではありません。
外れたときの扱いも同じ条にあります。5項は、収入の要件に当たらないことが明らかだと裁判所が認めたときに、小規模個人再生で行う決定をするとしています。ただし、再生債務者が小規模個人再生を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、申立てそのものが棄却されます。申立ての書面で意思を示しておく場面がここです。
認可の側は241条2項
給与所得者等再生を選ぶと、241条2項が適用されます。231条2項の2号から5号はそのまま引き継がれ、そこに条件が足されます。
4号が、給与またはこれに類する定期的な収入を得ている者で、その額の変動の幅が小さいと見込まれる者に当たらないときを不認可事由にしています。
そして7号が可処分所得の話です。順に3つ計算します。
- 再生計画案の提出前2年間の収入から所得税等を引く
- その額を1年あたりに直し、最低限度の生活に必要な1年分の費用を引く
- 残った額に2を乗じる
この額を下回る計画は不認可になります。手取りから生活費を引いた残りの2年分が、もう1つの下限です。231条の表による額と比べて、高いほうを払います。
生活費の額は政令で決まる
241条3項に、この1年分の費用は年齢・居住地域・扶養を受けるべき者の数・物価の状況その他一切の事情を勘案して政令で定めると書かれています。
自分で自由に見積もる数字ではありません。家族構成と住んでいる地域で決まるので、同じ収入でも人によって額が変わります。
送り先は「民事再生法第二百四十一条第三項の額を定める政令」
その政令の1条1項が、何を足し合わせるのかを決めています。
民事再生法(以下「法」という。)第二百四十一条第三項の一年分の費用の額は、次に掲げる額の合計額とする。
並んでいるのは、個人別生活費・世帯別生活費・冬季特別生活費・住居費・勤労必要経費です。前の4つは別表に金額が載っていて、年齢・居住地域・世帯の人数で引きます。居住地域は6つの区に分けられ、同じ年齢でも区によって額が違います。
「生活費」という1本の数字があるわけではありません。どこに住み、誰を養い、何歳かで、5つの内訳がそれぞれ動きます。
勤労必要経費は、収入が勤労によるものかで分かれる
6条1項が、この額を居住地域の区分ごとに決めています。第五区と第六区は表を引きません。
第五区及び第六区四十五万五千円
一方、同じ条の3項が、勤労による収入でない場合を落としています。
第一項に規定する場合以外の場合においては、勤労必要経費の額は、ないものとする。
引ける経費が減ると、可処分所得は増えます。年金や不動産の収入で暮らしている人は、同じ手取りでも弁済額の下限が上がる向きになります。
清算価値との比較もある
条文の表と可処分所得のほかに、実務でもう1つ見られる線があります。174条2項4号の「再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反するとき」です。
破産したら債権者が受け取れたはずの額を下回る計画は、債権者にとって再生のほうが不利になります。そのため、自分の財産を処分した場合の見込み額と比べられます。
持ち家や車、解約返戻金のある保険を持っている人ほど、この線が上がります。財産が少ない人は表の額のままで済みますが、財産があると弁済額がそちらに引き上げられます。
自己破産では手放すことになる財産を、個人再生では残せます。ただし残したぶんは弁済額に上乗せされます。車の扱いは自己破産と車にまとめました。
住宅ローンは別に扱う
231条2項2号の5,000万円を数えるとき、住宅資金貸付債権は除きます。住宅ローンを残したまま他の借金だけ減らす形は、住宅資金特別条項として別に定められています。
同項5号に、債権者一覧表に住宅資金特別条項を定める意思があると書いたのに再生計画にその定めが無いときは不認可、という規定もあります。出すつもりだと書いておいて出さない、ということはできません。
住宅ローンの扱いは個人再生と住宅ローンに分けました。
手続きが始まると勝手に払えない
もう1つ、開始後に効いてくる規定があります。85条1項です。
再生債権については、再生手続開始後は、この法律に特別の定めがある場合を除き、再生計画の定めるところによらなければ、弁済をし、弁済を受け、その他これを消滅させる行為(免除を除く。)をすることができない。
特定の債権者にだけ払うことはできません。親や知人からの借入も再生債権です。そこだけ先に返すことはできません。
2項と5項に例外があります。中小企業者の取引先が事業の継続に著しい支障を来す場合と、少額の債権を早く払うほうが手続きが円滑に進む場合です。どちらも裁判所の許可が要ります。
認可されなかったらどうなるか
174条2項が一般の不認可事由を並べています。法律違反で補正できないとき、再生計画が遂行される見込みがないとき、決議が不正の方法で成立したとき、決議が再生債権者の一般の利益に反するときです。
2号の「遂行される見込み」は、計画どおり払い続けられるかどうかです。支払いが始まってから苦しくなった場合の扱いはハードシップ免責は再生計画が払えなくなったときに分けました。
認可されたあとに取り消されることもある
小規模個人再生では、認可の決定が確定した時点で手続きそのものは終わります。233条です。
小規模個人再生においては、再生手続は、再生計画認可の決定の確定によって当然に終結する。
「当然に終結する」なので、終わらせるための手続きは要りません。ところが終結したあとにも、計画が取り消される規定が置かれています。236条です。
小規模個人再生において再生計画認可の決定が確定した場合には、計画弁済総額が、再生計画認可の決定があった時点で再生債務者につき破産手続が行われた場合における基準債権に対する配当の総額を下回ることが明らかになったときも、裁判所は、再生債権者の申立てにより、再生計画取消しの決定をすることができる。この場合においては、第百八十九条第二項の規定を準用する。
読むところは「明らかになったとき」です。認可のときに比べた清算価値が、あとから見て足りなかったと分かった場合を指しています。上で見た清算価値の比較が、認可のときだけの検査ではないということです。
申し立てるのは再生債権者で、裁判所が取消しの決定をすることができるという書き方です。必ず取り消されるわけではありませんが、財産を申告しないまま認可を得ても、そこで終わりにはなりません。
何から確かめるか
- 借金の総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下か
- 収入が継続的または反復して得られる見込みがあるか
- 231条の表による額がいくらになるか
- 給与所得者等再生を選ぶなら、可処分所得の2年分と比べてどちらが高いか
費用そのものは個人再生の費用にまとめました。弁済額とは別に、申立ての費用がかかります。
まとめ
- 最低弁済額は231条2項に不認可の線として書かれている
- 3,000万円以下なら5分の1か100万円の多いほう。上限は300万円
- 5,000万円を超えると個人再生は使えない
- 給与所得者等再生では可処分所得の2年分とも比べ、高いほうを払う
- 生活費の額は政令で決まる。自分で見積もる数字ではない
- 手続きが始まると、特定の債権者にだけ払うことはできない(85条)
- 認可の確定で手続きは当然に終結する(233条)が、清算価値が足りなかったと明らかになれば債権者の申立てで取り消されることがある(236条)
頼む先を決めるときに知っておくこと
個人再生の申立ては簡易裁判所の手続きではありません。だから司法書士が行うのは裁判所に提出する書類の作成です(司法書士法3条1項4号)。代理人として関与するのとは別のもので、認定の有無では変わりません。違いは司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにまとめました。
記事末尾の表に挙げたアース司法書士事務所は、個人再生の基本報酬を「110,000円〜(税込)」と示しています。そのうえで「別途、予納金等の実費が必要となります」と併記しています。事務所報酬と予納金を分けている例です。下限だけの数字なので、当サイトでは金額として掲載していません(2026年8月31日確認)。
費用を比べるときは、事務所の報酬と裁判所に納める予納金を分けてください。下限だけが示されていることが多いので、上がどこまでかは見積もりで聞くことになります。
代理してもらう場合は弁護士になります。シン・イストワール法律事務所は個人再生の着手金を、住宅ローンがない場合は506,000円としています。住宅資金特別条項を利用する場合は605,000円です(2026年9月1日確認)。下限ではなく額そのものが出ている形なので、上に書いた「〜」付きの表示と読み比べられます。
この記事で確かめたこと
- 原文から引用した文
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