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口座の差し押さえに4分の3の枠は無い

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2026/9/1公開

給料の差し押さえには4分の3という枠があります。そこから「口座も同じように守られる」と考えると、条文とずれます。このページは、預金口座が差し押さえられる場面を条文で確認します。

給料そのものの枠は給料の差し押さえは4分の3が禁止で、上限が政令にあるにあります。

預金の差押えは、銀行に届いた時に効く

預金口座の差押えは、銀行を相手にした手続きになります。民事執行法145条1項がその中身です。

執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。

第三債務者というのが銀行です。銀行は預金者に払ってはならない、と命じられる形になります。

いつから効くかは同条5項に書かれています。

差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。

本人に届いた時ではありません。銀行に届いた時点で、その口座からは引き出せなくなります。本人が郵便を受け取るのは、たいていそのあとです。

152条が挙げているのは債権の種類

4分の3の枠は民事執行法152条1項にあります。

次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。

そして「次に掲げる債権」の2号がこれです。

給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権

読みどころは、列挙されているのが債権の種類だということです。1号は生計維持のための継続的給付、2号は給与に関する債権。預金債権はここに挙げられていません。

条文の構造からいえるのはここまでです。実際の事件で口座の中身がどう扱われるかは、裁判所の判断が関わります。このページで断定はしません。

給料の側にも、4分の3で止まらない線がある

152条1項の括弧書きを飛ばさないところです。「その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分」。4分の3のほうが大きくなったら、政令の額で頭打ちになるという書き方です。

その政令が民事執行法施行令2条です。

法第百五十二条第一項各号に掲げる債権(次項の債権を除く。)に係る同条第一項(法第百六十七条の十四及び第百九十三条第二項において準用する場合を含む。以下同じ。)の政令で定める額は、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める額とする。一支払期が毎月と定められている場合三十三万円二支払期が毎半月と定められている場合十六万五千円三支払期が毎旬と定められている場合十一万円四支払期が月の整数倍の期間ごとに定められている場合三十三万円に当該倍数を乗じて得た金額に相当する額五支払期が毎日と定められている場合一万千円六支払期がその他の期間をもつて定められている場合一万千円に当該期間に係る日数を乗じて得た金額に相当する額

毎月払いなら33万円です。手取りが44万円のとき、4分の3はちょうど33万円になります。そこを超える手取りでは、守られるのは4分の3ではなく33万円のほうになります。44万円を超えた分は、まるごと差押えの対象に入る計算です。

支払期が半月なら16万5千円、旬なら11万円、日払いなら1万1千円と、期間に合わせて割られています。

賞与も同じ額です。

賞与及びその性質を有する給与に係る債権に係る法第百五十二条第一項の政令で定める額は、三十三万円とする。

賞与は「毎月」ではありませんが、額は33万円で揃えられています。月給と賞与が同じ月に出ても、それぞれの債権について枠が立ちます。

この線は、預金になったあとには付いてきません。上で見たとおり、152条1項が並べているのは債権の種類で、預金債権はそこに無いためです。

税金の滞納処分は、条文の作りが違う

同じ「口座の差押え」でも、税金の滞納処分は別の法律で動きます。国税徴収法76条1項も給与に枠を置いていますが、そこに続く2項があります。

給料等に基き支払を受けた金銭は、前項第四号及び第五号に掲げる金額の合計額に、その給料等の支給の基礎となつた期間の日数のうちに差押の日から次の支払日までの日数の占める割合を乗じて計算した金額を限度として、差し押えることができない。

「支払を受けた金銭」と書かれています。支払われる前の債権ではなく、受け取ったあとのお金のことです。しかも日割りの計算式まで置かれています。

民事執行法152条に、これにあたる項はありません。つまり税金の滞納処分のほうが、口座に入ったあとの給与について明文の枠を持っていることになります。

民事執行法(民間の債権者)

  • 152条に規定が無い

国税徴収法(税金の滞納処分)

  • 76条2項が日割りで枠を置く

税金の滞納処分のほうだけが、明文の枠を持っている

口座に入ったあとの金銭を守る規定があるかは、手続きで違う

厳しいのは税金のほうだと思われがちですが、この点では逆です。税金は滞納処分が止まらないという別の重さがあります。そちらは給料の差し押さえは4分の3が禁止で、上限が政令にあるに書きました。

枠の計算のしかたも別物

給与そのものに置かれる枠も、二つの法律で作りが違います。民事執行法152条1項は4分の3という割合で決め、政令の額を超えるときは政令の額を上限にします。毎月払いなら33万円です。

国税徴収法76条1項は割合ではなく、控除するものを号ごとに並べています。1号が源泉徴収される所得税、2号が特別徴収される住民税と森林環境税、3号が給与から控除される社会保険料。ここまでは天引きされる分です。

続く4号が、滞納者と生計を一にする親族について、生活保護法12条の生活扶助の基準を勘案して政令で定める金額。5号が、そこまでを控除した残りの20%にあたる金額です。

つまり手取りに近い額を出したうえで、そこから生活の基準額と2割を残す形になります。割合で切る民事執行法と、積み上げて残す国税徴収法という違いです。どちらが多く残るかは、収入と家族の人数で入れ替わります。

効力が生じる時点は、どちらも同じ

差押えのはじまりについては、二つの法律が同じ作りになっています。国税徴収法62条1項は、債権の差押えを「第三債務者に対する債権差押通知書の送達により行う」と定め、同条3項が効力の発生時期を通知書の送達時としています。

民事執行法145条5項と同じで、本人に届く前に口座は止まります。残高が動かせなくなってから郵便が届く、という順番はここから来ています。

承諾すると、税金の側の枠は外れる

国税徴収法76条には、さらに読み落とせない項があります。5項です。

第一項、第二項及び前項の規定は、滞納者の承諾があるときは適用しない。

承諾があれば、1項も2項も4項も適用されません。窓口で求められて承諾すると、この枠が働かなくなります。納付の相談をするときは、何に承諾したのかを控えておくことになります。

取り立てまでの日数も違う

差押命令が出たあと、債権者がすぐ取り立てられるわけではありません。民事執行法155条1項です。

金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。

同条2項は、152条1項各号の債権と2項の債権について、この「一週間」を「四週間」と読み替えると定めています。給与の差押えには4週間、それ以外には1週間ということです。

何を差し押さえられたか取立てまで
給料などの債権4週間
それ以外の債権1週間

短いほうにあたると、動ける時間もその分だけ短くなります。

通知が届いたときに確かめること

書面が届いたら、次の3つを先に見ます。

  1. 差押命令か、債権差押通知書か(民事執行法か国税徴収法か)
  2. 第三債務者が誰か(勤務先か、銀行か)
  3. 送達の日付

1で法律が分かれ、上に書いた違いがそのまま効いてきます。2が勤務先なら、勤務先に知られる話が別に生じます。経路は債務整理が会社にバレるのは、差押命令が届いたときにあります。

生活が成り立たない場合に範囲の変更を申し立てる道は、民事執行法153条にあります。手順は給料の差し押さえは4分の3が禁止で、上限が政令にあるにまとめました。

迷ったときの窓口

差押えが始まっている段階では、時間の余裕がありません。法テラス(日本司法支援センター)は、収入等の条件を満たす場合に無料の法律相談を扱っています。税金の滞納については、納付の相談窓口が各税務署と自治体にあります。

頼む前に、代理できる範囲を見る

認定を受けた司法書士が代理できるのは、1社あたり140万円までです。線の引き方は司法書士と弁護士の違いは140万円で分かれるにあります。

このサイトが窓口として載せているアース司法書士事務所は、事務所紹介のページに代表者の認定番号と大阪司法書士会の登録番号を出しています。報酬は「1社あたり11,000円〜(税込)」と下限の形で示されているため、金額はここに書いていません。代理権を超える場合の費用が別に置かれているので、差押えが始まっている状態で相談するなら、そこまで含めて聞くことになります。

1社あたり140万円を超える場合は、上限の無い弁護士に頼む選び方になります。シン・イストワール法律事務所は、公式サイトに代表弁護士の弁護士登録番号(60436)を載せている弁護士事務所です。

相殺は、差押えとは別の入口

同じ「口座が使えない」でも、差押えではなく相殺のことがあります。差押えは裁判所か役所から書面が届きますが、相殺は銀行が自分の判断で払戻しを止めます。

どちらなのかで、根拠になる法律も、止まる範囲も変わります。相殺の側は債務整理の口座凍結は相殺|手続きごとに違うにまとめました。

まとめ

  • 預金の差押えは銀行に届いた時に効く(民事執行法145条5項)
  • 152条が挙げているのは債権の種類で、預金債権は挙げられていない
  • 国税徴収法76条2項は「支払を受けた金銭」にも日割りで枠を置いている
  • 同じ口座の差押えでも、根拠になる法律で扱いが違う
  • 76条5項により、承諾があると税金の側の枠は適用されない
  • 取立てまでの日数は、給与なら4週間、それ以外なら1週間

届いた書面がどちらの法律のものかを、最初に確かめてください。

この記事で確かめたこと

原文から引用した文
9
出典
3(法令 3)
公開

引用が出典の原文と一致するかを、公開後も機械で照合しています。確かめ方は運営者情報にあります。

紹介した事務所の資格と料金

事務所運営会社誰が手続きをするか料金
アース司法書士事務所アース司法書士事務所(代表 近藤陽介・大阪市北区)認定司法書士(認定を確認)
簡裁訴訟代理等関係業務の認定 第612074号(大阪司法書士会 登録番号3331)
記載なし(理由は下)
シン・イストワール法律事務所弁護士法人イストワール法律事務所(代表弁護士 田島聡泰)弁護士(登録を確認)
弁護士登録番号 60436(代表弁護士 田島聡泰)
記載なし(理由は下)
アース司法書士事務所
事務所紹介のページに代表者の認定番号(第612074号)と大阪司法書士会の登録番号3331が載っている。報酬ページは任意整理・個人再生・自己破産の基本報酬をいずれも「〜」付きの下限で示している。同ページとトップページで料金表の項目数が違い、「裁判書類作成業務及び付随業務費用(司法書士の代理権を超える場合、1社につき315,000円)」の行はトップページの報酬一覧にだけある(2026-08-30 再確認)。各ページの下部に「法律相談は、司法書士法第三条第一項第六号及び第八号に定められた事項に限ります」と自ら書いている 任意整理の基本報酬が「取引中 1社あたり 11,000円〜(税込)」と下限でしか示されていないため金額を掲載していません。完済分は1社あたり0円、過払い報酬は訴訟によらずに回収した場合で回収額の20%(税込)、訴訟による場合は25%(税込)。「裁判書類作成業務及び付随業務費用」として、司法書士の代理権を超える場合は1社につき315,000円(税込)と別に示されています。減額報酬とオプション報酬は「当事務所では頂戴いたしません」と書かれています。いずれも別途、実費と交通費がかかると書かれています(2026-08-30 再確認)
シン・イストワール法律事務所
公式サイトに「シン・イストワール法律事務所」「代表者:代表弁護士 田島聡泰(登録番号60436)」の記載があります。A8 のプログラム名は「弁護士法人イストワール法律事務所」ですが、公式サイトの表示は「シン・イストワール法律事務所」なので、記事ではサイト側の名称を使っています。闇金・給与ファクタリングの案件も扱うと明記されていて、着手金が別建てになっています(闇金1件53,900円など)。 費用は税込のテキストで一覧になっています。任意整理の着手金は1社につき58,300円、減額報酬は減額分の11%。自己破産の申立ては同時廃止事件の着手金が407,000円、少額管財事件が506,000円で、いずれも債権者1社あたり11,000円が追加され、実費(印紙・郵券代等)が別途かかります。個人民事再生は住宅ローンなしで506,000円、住宅資金特別条項を利用する場合が605,000円。過払い金返還請求は残債務がない場合に着手金無料です。初回相談料は無料と書かれています(2026年9月1日確認)。

料金は各事務所の公式サイトで、税込価格が文章で明示されているものだけを掲載しています。 「誰が手続きをするか」は、弁護士の登録または簡裁訴訟代理等関係業務の認定を 各社の公式サイトで探した結果です。司法書士が任意整理を代理できるのは 1件140万円までで(司法書士法3条1項7号・裁判所法33条1項1号)、しかも認定を 受けた司法書士に限られます。公式サイトで見つからないことは、認定が無いことを意味しません。

出典