借金の整理を確かめる

銀行口座は調べられても勤務先は調べられないことがある

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2026/9/21公開

「督促を放っておくと、口座も勤務先も業者に筒抜けになるのでは」と不安になる人がいます。条文を見ると、そうとも言い切れません。口座と勤務先とでは、業者が使える手続きの範囲が違います。民事執行法の第三者からの情報取得手続を確認します。

まず、この手続きが動く前提がある

第三者からの情報取得手続は、督促が来ただけでは始まりません。起点になるのは197条1項です。

執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。

「執行力のある債務名義」が要ります。裁判の判決や、「直ちに強制執行に服する」と書かれた公正証書がこれにあたります。督促状や催告書の段階ではまだ債務名義が無く、この手続きは使えません。

条件はさらに絞られます。1号がこうです。

強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。

すでに強制執行を試みて、それでも完済できなかったことが要ります。つまり債権者の側にも、先に給料の差し押さえ口座の差し押さえを試すという手間が挟まります。いきなり情報取得の手続きから始まるわけではありません。

預貯金は、金銭債権の債権者なら誰でも対象になり得る

条件を満たした債権者が、銀行の預貯金口座を調べる根拠が207条です。

執行裁判所は、第百九十七条第一項各号のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。

対象になる借金は「金銭債権」とだけ書かれていて、種類は絞られていません。カードローンでも消費者金融でも、197条1項の条件さえ満たせば銀行に照会できます。銀行の名前を債権者の側が選び、そこにお金が預けてあるかどうかを答えさせる形です。

給与は、養育費と生命・身体の損害賠償だけに絞られている

一方、働いている先を調べる根拠は206条です。書き出しが207条とは違います。

執行裁判所は、第百九十七条第一項各号のいずれかに該当するときは、第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る請求権又は人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権について執行力のある債務名義の正本を有する債権者の申立てにより、次の各号に掲げる者であつて最高裁判所規則で定めるところにより当該債権者が選択したものに対し、それぞれ当該各号に定める事項について情報の提供をすべき旨を命じなければならない。

対象が「金銭債権」ではなく、「第百五十一条の二第一項各号に掲げる義務に係る請求権」(養育費や婚姻費用など、家族を支える義務にもとづく請求権)と「人の生命若しくは身体の侵害による損害賠償請求権」だけに絞られています。

預貯金(207条)

  • 対象は「金銭債権」全般
  • カードローン・消費者金融の債権者も対象になり得る

給与(206条)

  • 対象は養育費等の扶養義務の請求権、または生命・身体の侵害の損害賠償請求権
  • 通常の借金の債権者はこの条文では対象にならない

どの種類の借金の債権者が申し立てられるか

預貯金と給与で、対象になる債権者が違う(民事執行法206条・207条)

通常の借金(カードローンや消費者金融)の債権者は、206条の対象に入っていません。働いている先の情報を、この手続きで直接取ることはできないということです。給料の差し押さえ自体は借金の債権者でもできますが、そのためには先に勤務先が分かっている必要があり、206条はその分かる手段を養育費や生命・身体の損害賠償に限っている、という関係になります。

不動産も、預貯金と同じ扱いになる

205条は、借金をしている人の名前で登記された土地や建物についての情報取得です。206条の給与のように請求権の種類を絞る言葉が無く、207条と同じく「金銭債権」の債権者が対象です。登記所(法務局)に照会して、家や土地を持っているかどうかを調べる形になります。持ち家がある場合、預貯金と同じように通常の借金の債権者からも照会の対象になり得ます。

財産開示手続を経ていれば、さらに絞られる

205条(不動産)と207条(預貯金)には、もう1つ条件があります。207条は205条のルールをそのまま使っていて、その205条2項がこうです。

前項の申立ては、財産開示期日における手続が実施された場合(当該財産開示期日に係る財産開示手続において第二百条第一項の許可がされたときを除く。)において、当該財産開示期日から三年以内に限り、することができる。

先に財産開示手続(196条・197条)で開示の日を経ていることが前提です。債権者がある日突然、情報を取る手続きだけを使ってくるわけではなく、その前に裁判所へ出向いて財産を開示する段階を踏んでいることになります。

通知は、あとから来る

情報が取れたあと、借りている側に何が起きるかは208条にあります。

第二百五条第一項、第二百六条第一項若しくは第二項又は前条第一項若しくは第二項の申立てを認容する決定により命じられた情報の提供は、執行裁判所に対し、書面でしなければならない。

そして2項です。

前項の情報の提供がされたときは、執行裁判所は、最高裁判所規則で定めるところにより、申立人に同項の書面の写しを送付し、かつ、債務者に対し、同項に規定する決定に基づいてその財産に関する情報の提供がされた旨を通知しなければならない。

通知が来るのは、情報を渡したあとです。事前に「これから照会します」という知らせは条文に無く、借りている側が知るのは結果が出たあとになります。

財産開示期日は、出ないと刑事罰になる

第三者からの情報取得手続の前に立つ財産開示手続には、197条とは別に213条1項5号という罰則が付いています。

執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日において、正当な理由なく、出頭せず、又は宣誓を拒んだ開示義務者

これにあたると、6月以下の拘禁刑か50万円以下の罰金の対象です。正当な理由なく日を休んだり、宣誓を拒んだりすると刑事罰の話になります。督促を無視し続けた場合、その先に呼び出しが来ることもあるということです。逆に言えば、財産開示の日に応じて事情を話すこと自体は、避けるべき場面ではありません。

まとめ

  • 第三者からの情報取得手続を使うには、先に債務名義と、強制執行を試みた実績が要る
  • 預貯金口座(207条)は、通常の借金の債権者でも対象になり得る
  • 給与(206条)は、養育費等の扶養義務の請求権と、生命・身体の損害賠償請求権に限られる
  • 通常の借金の債権者は、この手続きで直接、勤務先を調べることはできない
  • 通知は情報提供のあとに届く。事前の予告は無い

ここまで進む前に、相談の前に用意するものを読んで早めに手を打つほうが選べる道は多く残ります。

この記事で確かめたこと

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